無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

泥にまみれる意思。

人間プログラム

人間プログラム

 文学調の言葉で生と死、世界への違和感とつまらない現実を歌うバンド。彼等くらいの世代(20代前半)のバンドの多くが、そうした苦悩や閉塞を前提として受けとめ、そこを乗り越え、俯瞰したところから音を鳴らしているのに比べ、バックホーンはとことん地べたでもがき、あがこうとする。こういうバンドは貴重だし、新鮮でもある。歌詞のどの一節を取り出しても記事の見出しになってしまうような言語感覚もすごい。タイプはやや違うけど、イースタンユースの音に初めて触れた時のような、背筋を正して対峙しなければならないような感覚を覚えた。朴訥として懐かしい気分のする童謡的なメロディーや、意外とレンジの広いアレンジセンスもいい。ヘヴィーな言葉は決して闇雲に自分を貶めて傷つけるものではなく、外に向けられている。不器用ながら彼らは世界とコミュニケートしようとしている。ここまでシリアスで重い音楽がどこまでシーンの中で受け入れられるのかわからないが、一つ何かきっかけがあれば大化けするかもしれない。そういうポテンシャルを確実に秘めたバンドだと思う。
 最初に聞いた時はのどに魚の骨が引っかかったような異物感とも言える衝撃を受けた。長く付き合えるバンドというのはそういうものじゃないかな、と思う。