無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

VHS誕生秘話。

陽はまた昇る [DVD]

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 NHKの「プロジェクトX」でも取り上げられた、ビクターによるVHS開発の実話を映画化した作品。当時、家庭用ビデオはソニーのベータで統一の動きが濃厚だったが、新規格禁止の期日ギリギリにVHSを発売し、今では世界標準にまでなったVHSのサクセスストーリー。その開発に当たったドラマは、素晴らしく面白いし、胸を打つ。まさに、事実は小説よりも奇なりといったところだ。僕自身、エンジニアのはしくれとして、こういう話はすごくうらやましいというか、こういう開発をしてみたいなあという気持ちになる。リストラの対象になった部所がこんな大仕事をするという爽快感も、不景気な今の日本にはうってつけといえるものだろう。キャラクターはともかく、ビクターにしろ松下にしろソニーにしろ、企業名がそのまま実名で出てくるのでそういう意味でも興味深い。
 ただその、元からいじらないでも面白い話を映画化したのだからそりゃあつまらないわけはない。それなりにきちんと面白い。だけども、映画にしたことによる、映画そのものの面白さがどれだけ加味されていたかというとちょっと疑問。監督の佐々部氏にとっては初監督作品と言うこともあるし、ちょっと手堅く作りすぎたかなあという気もする。ラストは泣かせる話にしたかったのだと思うけど、正直言えば「プロジェクトX」で中島みゆきの主題歌が聞えてきた方が涙腺破壊力高いんじゃないかという気がしてしまう。緒方直人演じる架空のキャラクターと、ソニーにいる篠原涼子の恋人とのシークエンスも、はっきり言って別になくたっていい。
 でも、今普通にビデオ見ている人たちにも、VHSってこうやって世の中に生まれたんだ、と思うきっかけになればいいのではないでしょうか。ちなみにウチに初めて入ったビデオはベータでした。