無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

世界は終わらない。

SABRINA HEAVEN

SABRINA HEAVEN

 約2年ぶりのニューアルバム。デビュー以来最も長いインターバルがあったし、その間にチバがROSSOを始めたりと、バンドを巡る状況にイヤな予感を感じた人ももしかしているのかもしれない。しかし、昨年の"WHERE IS SUSIE?"ツアーを見た人なら、そんな不安はなくなったはずだ。先行シングル「太陽をつかんでしまった」を足がかりに、きっちりと現在進行形のミッシェルを見せてくれる貫禄のアルバムだと思う。
 前作『ロデオ・タンデム・ビート・スペクター』で見られたジャズへのアプローチはさらに深いところまで入りこみ、パーカッションやトランペット、ピアノを用いたことでサウンドの奥行きが増している。ラスト「NIGHT IS OVER」のようなメランコリックなインストは今までの彼らにはなかったものだ。ガッツンガッツン勢いと破壊力でけもの道を転がっていた、前作までの印象とはちょっと違って、ゆったりとした中に確実にバンドの新たなグルーヴを感じさせる音だと思う。とは言っても、1曲目「ブラック・ラブ・ホール」の完璧なブレイクからしていきなり脳髄まで電気が走るようなロックンロールがビシッと来たりするのだ。バンドの中の世界が確実に広く、深くなっている。
 これだけ長いキャリアを持ち、同世代のバンドが解散したり休んだりしていく中で、自分達の音楽を刷新し続けていくエネルギーを持つのは並大抵のことではないと思う。ミッシェルを続けていくことが目的にならない限り、ミッシェルは転がり続けるだろう。兄弟となるミニアルバム『SABRINA NO HEAVEN』も楽しみだ。